メンタルヘルスについて

はじめに

2012年、厚生労働省から、メンタルヘルスチェック義務化を盛り込んだ、労働安全衛生法改正案が提出され、臨時国会で審議されました。その審議自体は、年末の衆議院解散により流れてしまいましたが、もし審議が継続していれば、9割方通過すると言われていたもので、今後また審議入りするものと予想されています。 この労働安全衛生法の改正案は、今まで推進義務であったメンタルヘルスチェックを身体の健康診断と同様の実施義務に変更するもので、職場内でのメンタル不調者が年々増加し、従業員及び企業に大きな損害を与えている現状を受け、労働衛生や医療費削減、精神疾患対策、経済対策、労働人口対策等の観点から、国の対策が治療から予防への観点に移行し始めている結果です。
 この法制化により、従業員のメンタル不調の予防及びメンタル不調者への支援の重要性がより高まるとともに、メンタル不調によって起こりうる企業・組織へのリスクに対しての対策も今まで以上に必要となります。
メンタルヘルス対策を推進していくうえで、まず「現状」と「メンタル不調3主因」をご理解下さい。

メンタルヘルス対策の現状

【業種からみる現状】

メンタルヘルスに問題を抱えている社員(正社員、産業別)

【企業規模からみる現状】

メンタルヘルスに問題を抱えている労働者(正社員、企業規模別)

【解説】

6割弱の事業所で、正社員のメンタル不調者が存在するとの調査結果が出ている。しかし、明確に出せる数字としてメンタル不調により休職している又は正常な勤務が出来ない従業員のみを把握しているケースも多く、隠れメンタル不調の従業員や兆候が出ている従業員の数は含まれていない傾向にある。
 実際、代表者からはメンタル不調の社員はいないと聞いていたが、実際現場でのヒアリングから、メンタル不調の職員が全体の3~14%程度いた実例も多数あり。
 業種別では、慢性的な長時間労働や厳しい職場環境におかれる、情報通信業、医療・福祉が突出して多いが、どの業種も50%以上のメンタルヘルス不調者が存在している。

【休職者数から見る現状】

「年度別就業障害発生状況(%)」

【経済的損失から見る現状】

メンタル不調発生に伴う経済損失(厚生労働省試算)

【解説】

調査結果によると、2011年1年間に発生した従業員の30日以上の休業原因で、最も多かったのがうつ病を中心する「メンタル疾患」で、全体 の68%に達した。
 また、調査実施の2000年から右肩上がりに増加をし、高止まりをしている。そして、そのメンタル不調に伴う休職者の発生は、企業及び日本に対してかなりの経済的損失を生み出していることが、厚生労働省の試算からも伺える。

【社会保障から見る現状】

精神障害等の労災補償状況

労働災害関係高額判決事例

傷病別 件数の構成割合

健康保険、労働保険等の社会保険関係のデータからもメンタル不調の増加は顕著に見られ、メンタルヘルス対策を企業に求めざるを得ない裏付けとなっている。
 また、労働災害における高額損害賠償判例トップ10のうち、メンタルヘルス絡みが9判例に上り、企業のリスクヘッジという観点からもメンタルヘルス対策が急務となっている。

メンタル不調の3主因

【心因性】
過度のストレスやフラストレーションなどを主な要因とするケースです。反応性うつ病不安障害、適応障害、その他様々な障害を発症させるケースが多く、環境要因の影響もありますが、環境要因に対処する個人要因がその罹患に大きな影響を与えます。そのため薬物療法の効果が低く、内的なアプローチが求められます。 現代のメンタル不調に最も多く見られる主因です。
【外因性】
脳や他の身体部位に、何等かしらの刺激や要因が外部から加えられたことを原因とするものです。感染・脳血管疾患・交通外傷による機能損傷・薬物乱用などが外因として挙げられます。
【内因性】
脳の機能的な問題と考えられているが、明確には原因が特定されていません。統合失調症や躁うつ病は内因性精神疾患といわれており、薬での治療が優先されるものです。

上記で触れている通り、職域におけるメンタルヘルス不調の多くは「心因性」です。言い換えれば、職場のメンタルヘルス対策の最優先として考えるべきは、心因性精神疾患・障害への対応策が中心でなければなりません。 心因性のメンタル不調は、罹患後の対策ももちろん重要ですが、個人的要因が大きな影響を与え、個人的要因と環境要因との関わりで発症するケースが非常に多いものであるため、「いかに予兆をとらえて罹患を防ぐ/早期発見と早期対処を行う」かという「予防・早期対処」の観点からの対策も最重要なポイントとなります。

もちろん、多くの企業ではその理解があるからこそメンタルヘルス対策を実施されているのですが、現状のデータが現している通り、増加の一途を辿っています。
何故なのか?これを次のページでご紹介します。

メンタルヘルス対策の現状と問題点について詳しくはこちら